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月経研究会

月経を「生理」とよぶのは誤り

健康な女性をめざすあなたへ-月経を明るく前向きに-月経を「生理」とよぶのは誤り- 松本清一

近頃は、月経のことを生理とよぶ人が大変多いようです。これは、月経という言葉に何-かこだわりがあるからかも知れません。元来生理という言葉は、月経のことを意味するのではなく、英語のphysiologyに当たる言葉で、身体の正常の機能のことを言います。生理という言葉が月経の代わりに使われるようになったのは、実は生理休暇という制度ができてからなのです。

月経に当たる言葉は、日本だけでなく欧米や中国などで昔から使われている言葉をみても、すべて月に関係しています。ラテン語のメンストルース(menstruus)も月を意味する言葉です。古代の中国では月事とよばれていますが、月浣、月候、月信、月水というような言葉も使われています。

我が国でも月のもの、月やく、月のめぐり、月のさわりというように月に由来する言葉を使っていたようです。昔は月経の原因として、やはり月の影響が一番強く信じられていたからでしょう。ところが、昭和22年の労働基準法の改正により生理休暇という制度ができ、法文の中に「生理日の就業が著しく困難なる者は」といって、生理日という言葉が突如現れたのです。しかも、生理日とは何を指すのか、ここでは全然説明されていませんでした。それまで生理という言葉は、月経に対しては普通使われていなかったのです。当時は終戦直後の混乱期で、法律をつくる際の国会審議などもあまり十分ではなく、アメリカ軍のGHQが「よかろう」と言えば、それで法律が通ったような時代ですから、そういうことも起こり得たと思います。その際、少なくとも医師は全然相談にあずかってなかったろうと思います。もし医師が関与していれば、生理という言葉は絶対使わなかったでしょう。

ともかく、法律に使われていいますから、それ以来、恐らく学校でも生理という言葉で教えることになり、次第に普及していったものと私は考えています。ある調査によりますと、大体60歳位以上では、月経とよんでいる人がおおくてそれ以下の年代では生理とよぶ人が多い、という結果が示されています。月経とよぶ人の多くは、生理休暇の制度ができる以前に学校を卒業していた人ではないかと思います。いずれにせよ、生理という言葉は正しい意味を表していませんから、月経という言葉を嫌がらずに使ってほしいと思います。よく月経のことを「あれ」などとよぶ人がいますが、私は月経を生理と言うのはこれと同じことではないかと思います。

「人間と性シリーズ⑩」松本清一・荻野博著、一般社団法人日本家族計画協会(http://www.jfpa.or.jp/)(編)1989刊、より

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