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月経研究会

生理と言わず月経と言おう

トピックス⑧ 生理と言わず月経と言おう 川瀬良美

1.月経のことを何と呼んでいますか

あなたは月経について話す時、何と呼んでいますか。82名の女子大生に、同様の質問をしたところ12種類の回答がありましたが、複数の人が記述した呼び方を図1に示しました。全員が使用していた第1位の言葉は「生理」でした。正確な呼称である「月経」を用いていたのはたったの11.0%でした。およそ15年前にMSG研究会(代表松本清一)が27000人の8才から64才までの日本人を対象に行った調査1)でも、第1位は「生理」(81.9%)でした。また、月経を使用している割合は、全体では0.8%でしたが、年代別にみると60才代では14.3%が使用しており、年齢が高い人の使用頻度が高かったのです。二つの結果から、月経という言葉が正確に用いられないで、「生理」や「あれ」などの曖昧な表現が代用される傾向が強まり、中でも「生理」の使用がいっそう定着しているようです。page001

 

 

2.なぜ月経と言わないのですか

先の82名の大学生に「なぜ月経は月経と呼ばれないのか」という質問もしました。複数書いた学生がいたので記述総数は98個でしたが、類似の内容を7つのカテゴリーに整理し、それを3つのグループにまとめたものが表1です。まず、グループ1(G1:64.2%)は、日常的に生理という言葉が広く用いられていて、月経という言葉に慣れていないという理由です。次にグループ2(G2:32.6%)は、性に関わることだから、恥ずかしいから、月経は隠すべきものという理由です。最後のグループ3(G:3.1%)は、余り深く考えていなかったというものです。「月経」が用いられない理由からみて、グループ1の人は、月経という言葉が広く日常的に使われるようになれば容易に改善されるでしょう。しかしグループ2の人は、月経という言葉に誤った意味づけをしているので正しく認識するための知識が必要です。

3.月経の考え方の変遷

松本2)によると、太古の時代には、月経は神秘的なもの、神聖なものとして崇められ敬意をはらわれていたようです。月経のタブーは生命の神秘に対する女性の力を祝う広義のタブーで、神聖なタブーとされていたといいます。その後、仏教伝来による影響、社会体制の変化などから、性のタブーや血のタブーなどの考えも関連づけられて徐々に不浄視する考えが浸透したそうです。そして、月経本来の意義とは無関係に秘すべきもの、恥ずべきものとしての誤った認識が定着しました。そして現代とは大きく相違した対処の不自由さも関連して様々な迷信や差別が生まれました。また、月経に伴う随伴症状も月経の否定的な側面を強調する一因となり、女性の能力や特
性について事実と相違した誤解や偏見をもたらしました。月経が生理と呼ばれるようになった経緯について田口3)は、月経にまつわる休暇を訴える際に、随伴症状による不都合を「生理的故障」と表現したことによって、月経=生理が定着したのだろうと
述べています。このように女性自らが生理という婉曲表現を用いたことは、「隠すべきものとしての月経」という観念を女性自身が受けいれていたことを意味すると指摘しています。

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4.生理と言わず月経と言おう

月経は女性の生殖機能と関連していることは事実ですが、消化や呼吸と同様な人間の身体の生理的機能を指す言葉です。月経のメカニズムについて解明されていない時代は、その不可解さや神秘性から、タブー視されたり、迷信が生まれ誤った観念が形成されました。しかし21世紀の現代は、月経のメカニズムも解明され、周期の把握も可能となりました。月経時だからといって特別に日常生活を変える必要もなく、健康な身体の周期性の証として自覚できます。女性の健康な身体機能としての月経を隠すべき恥ずかしいことと考えるのは誤りですし、そうすることは女性の素晴らしい特性を否定することです。月経随伴症状の解決に積極的に取り組めないのも、月経への否定的認識が快適な状態をイメージすることを困難にさせて、主体的に取り組む意欲を減退させるからです。月経があることは、女性だけがもつかけがえのない能力です。歴史的につくられた月経に対する誤った認識を変えて正確に「月経」と言いましょう。誰もが月経と言えばそれが当たり前になります。

文献

1)MSG研究会(代表松本清一):月経に関する意識と行動の実態報告書、自治医科大学看護短期大学内、栃木県:1990.

2)松本清一:日本女性の月経(株)フリープレス、東京、1999.

3)田口亜紗:生理休暇の誕生、青弓社、東京、 2003.

引用文献 川瀬良美 2004 Topics.8 生理と言わず月経と言おう 松本清一(監修)『月経らくらく講座-もっと上手に付き合い、素敵に生きるために-』 文光堂(http://www.bunkodo.co.jp/)p132、より

 

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